高知新聞 1994.8.21掲載
 


 破裂の恐れのある高齢男性(85)の腹部大動脈瘤(りゅう)の人工血管置換手術に高知市内の民間病院が成功。民間病院でこれほど高齢者の手術は珍しく、21日の第47回県医師会学会(高知市・県医師会)で発表する。  
 
 手術を行ったのは、高知市入明町の岡村病院の岡村高雄院長(心臓血管外科)と竹内一八消化器外科医長。
 
 腹部動脈瘤は、瘤が小さい時は瘤のある所が脈を打つようにどきどきするくらいで無症状。こうした慢性期は手術しやすく、危険は少ない。
 
 瘤は6センチ以下だと破裂率は16%だが、7センチ以上になると76%と急激に高くなる。また、瘤は破れる直前に急に大きくなり、背中に痛みが出る。
 
 85歳の男性患者も背中の痛みを訴えて同病院に来院。検査の結果、10センチの瘤が判明。心臓拡大、不整脈、腎臓機能が低下し、さらに痛みも増した。このため破れる恐れがある(切迫破裂)と診断、緊急手術を行った。手術で瘤を取り、瘤の部分に人工血管の置換手術を施した。患者は5日目から食事が取れるようになり、約一ヵ月で退院した。
 
 岡村院長は「破裂すると大量出血とそのショックでかなり危険な状態だった。かなり 高齢であることと、血管系の救急を公的病院でなく民間病院で行ったということで学会に発表することにした」と話している。